Archive for 11月, 2013
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秋のレンタル楽譜紹介⑩シンフォニックダンス
こんにちは。風に光に、冬の気配が増してきた感じがしますね。10回シリーズでお届けしてきた「“秋の”レンタル楽譜紹介」も、本日が最終回となります!
最後にご紹介するのは、こちらの作品♪
シンフォニックダンス/福島弘和
演奏時間:約9分
レンタル価格:28,000円(税抜)今年3月に行われた「21世紀の吹奏楽 響宴XVI」で演奏され、JBA下谷奨励賞を受賞した作品です。
おおたウインドオーケストラの委嘱により2010年に書かれたこの作品の着想は“極楽鳥の求愛のダンス”から。ゴクラクチョウの仲間は、外界から遮断されたニューギニアやオーストラリアの一部地域に生息し、非常にユニークな進化を遂げました。“華美な飾り羽を持ったオスが、美しく激しいダンスでメスを魅了し、より美しく生命力あふれるダンスをしたものが子孫を残す”という独自のルールから、何世代もかけて、その美しさに磨きをかけてきたのです。ニューギニアにすむ人々の間には、「極楽鳥信仰」とも呼べるような精神が伝わっています。夢のように美しい羽根を持ち、中空を優雅に舞う極楽鳥は、土地の人々の祖先の魂、人の魂である…と考えられてきたのです。
大型で美しい蝶(揚羽蝶など)をみて、「あれは人の魂だ…」ということがあるのに、似ていますね。
ニューギニアの人々は、自分たちのくらしの儀式に、極楽鳥の求愛のダンスをまねた動きを取り入れたりもしてきました。そんな極楽鳥の姿かたち、生態に着想を得て、福島氏は激しく生命力に溢れ、どこか原始の営みを思わせる作品を書き上げました。1曲のうちに様々な拍子が現れ、「拍子感、ビート感を大切に演奏して欲しい」と話しています。
音組織、使用した楽器、それらで奏でるリズムの全てが相まって、独特の世界を作り出しています。特に打楽器が大活躍!していますので、ぜひ注目して頂きたいところです。
そして独特の音組織…音列、音階と言い換えてもいいのですが、楽譜にしたらどんなふうに書いてあるのか?
ここでお見せすることも出来ないのですが…ぜひ一度見てみて頂きたい!エンハーモニック(異名同音)変換を多く用いた記譜になっています。「転調しているわけでもないのに、一つの小節にシャープもフラットもあるって、どうゆうこと?」と思われる方も、いらっしゃるかもしれませんが、ここでは一つ、「臨時記号があることで、1個1個の音のルーツがわかる」と考えてみてはどうでしょうか。
「その音がどこに解決したがっているのか」「どんな音階や和音から派生したのか」「どこから来てどこに行くのか」そういうことを、臨時記号が教えてくれます。
マニア心をくすぐる記譜なんです(笑)
だからほら、日頃から、「AisってBでしょ。ややこしいわー」とか、言っちゃダメなんですよ?
同じにも見えるけど、やっぱり違うものなんです。閑話休題。
リズムのヴァリエーションも豊富なこの作品ですが、どうもここは“鳥”ではなくて“人”の踊りではないか?と感じられる箇所があります。
鳥と、人と、ダンスと。躍動する生命の力と、原始よりつらなる営みを。
シンフォニックにまとめてみた、そんなふうにも表現できる気がします。まだまだ新作ですので、「今までやったことがない曲を!」とお探しの方、ぜひこの「シンフォニックダンス」をチェックしてみて下さい。響宴のCDが、ブレーンミュージックより発売中です。
21世紀の吹奏楽「響宴XⅥ」
ブレーンミュージックBOCD-7492・7493
(「シンフォニックダンス」の演奏:龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部)さて、最後までお読み頂き誠にありがとうございます。拙い文章ではございましたが、少しでも楽しんでいただき、また楽曲について興味を持って頂けていたら幸いです。
また折に触れて、このような記事をお届け出来ればと考えておりますので、その際はまたぜひお付き合いくださいますよう、宜しくお願い申し上げます。楽譜事業部
高橋
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秋のレンタル楽譜紹介⑨火祭りの踊り パラフレーズ
こんにちは。しばらくこちらのシリーズはお休みさせて頂き、コンクールの演奏曲をご紹介しているうちに、すっかり秋も深まってしまいました。
「秋の」レンタル楽譜紹介、再開です! 本日ご紹介するのは、こちらの作品♪
火祭りの踊り パラフレーズ / マヌエル・デ・ファリャ作曲、長生淳編曲
演奏時間:約7分
レンタル価格:28,000円(税別)全日本吹奏楽コンクール全国大会でもその作品が多数演奏され、注目を集めている長生氏の筆による作品です。
この作品のもとになったのは、スペインを代表する作曲家マヌエル・デ・ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」。若く美しい未亡人が、新しい恋人との仲を亡き前夫の霊に邪魔されるので、友人に頼んで亡霊を誘惑してもらい、その間にめでたく新しい恋を成就させる…という筋書きです。
ファリャはスペイン南部のアンダルシア地方はカディスの出身で、若い頃はパリに出て活躍し、当時の音楽人-デュカス、ドビュッシー、ラヴェル、アルベニスなどと親交を深めましたが、やはり生地アンダルシアの音楽は常に彼の中にあったでしょう。スペインの音楽を色濃く映したバレエ音楽「三角帽子」などもとても有名です。
「火祭りの踊り」はバレエ音楽「恋は魔術師」の中でも特によく知られた楽曲です。長生淳の「火祭りの踊り パラフレーズ」では、「恋は魔術師」の構成曲から「火祭りの踊り」の他に、「序奏と情景」「無言劇」「情景」「愛の戯れの踊り」等を一部引用しています。
東京佼成ウィンドオーケストラからの編曲委嘱で、一人一パートを基本にメンバー一人一人が力を発揮できるようにと考えられています。もとが2管編成の管弦楽曲ですので「まずは原曲を聴いて頂きたい」とは長生氏も話しているところですが、ほかのアプローチとしては、スペインの音楽とそれが根ざすスペインの風土について見識を広めてみる、という方法もありそうです。
音楽の録画録音物を視聴するほか、写真を見てみたり、民俗を調べてみたり、ネイティブスペイン人のいるスペイン料理屋や居酒屋にいって食文化を体験したり、生演奏や舞踏も見ることが出来たら…自分たちが演奏する曲も、空気から変わっていくのではないでしょうか。ここに書いてしまうのは少し迷うところですが、この「火祭りの踊り パラフレーズ」は、難易度を表すグレードを”6”と設定させて頂いています。CAFUAレンタル譜の難易度評価は5段階で、同じく長生氏の手による「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」がグレード5となっています(まぁ、そうは言っても、グレード5+や6とさせて頂いている作品は他にもいくつかあるのですが…)。
このグレード設定も、選曲の際には多少気になりますよね?しかし!
☆今なら来年のコンクールまで、じっくり時間をかけて準備できる!ということ、そして
☆難しさにとらわれず、ファリャとスペイン音楽の空気を楽しんで頂きたい!という点から、
楽曲へのアプローチについて、おせっかいながらも少々ご提案させて頂きました。「火祭りの踊り」は「恋は魔術師」のハイライト。美しい女友達に、浮気性だった前夫の亡霊を誘惑してもらう…妖艶で蠱惑的な踊りです。
吹奏楽のステージで演奏する時は、聴衆を音楽で魅了する! そんな心持ちで、演奏してみてはどうでしょうか。作品が持つスペインのカラーも、舞台に色を添えてくれると思いますよ。マヌエル・デ・ファリャ/長生淳「火祭りの踊り パラフレーズ」の演奏が収録されているCDはこちら!
CAFUA セレクション2012 吹奏楽コンクール自由曲選
「火祭りの踊り パラフレーズ」
指揮:加養浩幸、浦川薫
演奏:航空自衛隊航空中央音楽隊観賞用にも選曲用音源にも、自信を持ってお勧めできるCDです。
「秋の」レンタル楽譜紹介シリーズ、次回が最終回となります。
最後は何の曲かな? どうぞお楽しみに♪楽譜事業部
高橋
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全国大会演奏作品紹介4/5
こんにちはー!
全5回シリーズでお届けする、吹奏楽コンクール全国大会で演奏された作品をご紹介するこのコーナー。本日は井澗昌樹「Bye Bye Violet」と、高昌帥『吹奏楽のための交響詩「陽が昇るとき」』をご紹介させて頂きます。「Bye Bye Violet」/ 井澗昌樹
演奏時間:約8分半、グレード:4、レンタル価格:29,000円(税別)今年の全国大会では、泉シンフォニックウィンドさんが演奏されました。
現在、CAFUAレンタルライブラリーでお取り扱いしている唯一の井澗作品。「喪失」を第一のテーマに、「気紛れな哀しみ」や「手の届かない美しさ」なども描き出しています。
なぜ”Violet”なのか? それは、考えるにとても価値のあるテーマです。
“Violet”からイメージするモノ・コト…ヴェルディの歌劇「椿姫」、その悲恋。すみれの花、すみれの色。紫色、むらさき。日本人もまた、古来より「むらさき」の色やことばに私的な意味合いを込めてきました。
このようにこだわりを持って選んだ”Violet”です。「もし諸事情によりカタカナでタイトルを表記する際には、必ず“バイオレット”ではなく“ヴァイオレット”と表記して欲しい」と井澗氏は話しています。「喪失」「哀しみ」「美しさへの憧れ」に、激情に翻弄され、絡まり合うリズム、エネルギーの昇華・解決という展開が1曲の中につまっています。
演奏する人それぞれに、どんな結末が待っているのかを見出して頂きたい作品です。井澗昌樹”Bye Bye Violet”は、こちらのCDに収録されています。
酒井格 ティンパニ協奏曲
指揮:若林義人
演奏:龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部ティンパニ独奏には中谷満氏を迎えての、ライブ演奏を収録したディスクとなっております。
それでは次の曲に参りましょう!
『吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」』/ 高昌帥
演奏時間:約30分(全楽章通奏時)、グレード:4~5、レンタル価格:48,000円(税別)広島市立安佐中学校さん、大津シンフォニックバンドさんが演奏されました。
4つの楽章からなるこの作品、それぞれの楽章が別々の委嘱を受けて作曲されたという経緯があります。第3楽章となる曲は関西大学応援団吹奏楽部の委嘱、第4楽章となる曲は、宝塚市吹奏楽団の委嘱で作曲されました。
先にこの二つの曲が出来た時点で、高氏はこれらを含む交響組曲の構想を思い立ち、後にウィンドアンサンブル「一期一会」と創価学会関西吹奏楽団からの委嘱を受けて、第1楽章・第2楽章になる作品を作曲しました。
このように出自も作曲時期も異なる作品が並ぶことになるわけですが、それぞれの作品に共通する音楽素材を用いることで、全体の統一を図っています。総奏による激しい表情とフルートソロが率いる叙情性が印象的な第1楽章「衝動」から、
リズムが常に不安定で諧謔的(スケルツォ)な性格を持つ第2楽章「情緒」、
安らかでノスタルジックな金管のコラールとメロディアスな部分を持つ第3楽章「祈り」、
ソロ楽器の弱奏から終楽章らしい昇華を見せる第4楽章「陽光」まで。一つ一つの楽章が独立した楽曲でもあり、それぞれにキャラクターのある作品群ではありますが、『吹奏楽のための交響詩「陽が昇るとき」』としてのまとまり、起承転結を表現するにはやはり4つ全ての楽章が必要でしょう。
コンクールのような場では全楽章通奏するわけにはいかないと思いますが、高氏は自身の作品に対し「カット等の編曲は、演奏団体の責任者に判断をお任せする」と話しているところですので、「長いから」という理由で候補から外す必要はありません。
ぜひ、前向きに演奏を検討してみて頂きたいと思います!高昌帥『吹奏楽のための交響詩「陽が昇るとき」』は、こちらのCDで聴くことが出来ます。
高昌帥 吹奏楽のための交響詩「陽が昇るとき」
指揮:小澤俊朗
演奏:神奈川大学吹奏楽部
2006年の定期演奏会を収録したライブディスクとなっております。次回は、新譜および今後お取り扱い予定の作品をご紹介する予定です!
どうぞ、お楽しみに♪
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全国大会演奏作品紹介3/5
こんにちは♪
本日は、吹奏楽コンクール全国大会で演奏された作品の中から、CAFUAレンタルライブラリー取り扱いの鈴木英史作品をピックアップしてご紹介していきたいと思います!はじめはこちら!
「ピエトロ・モンタージュ」
演奏時間:約9分半、グレード:4、レンタル価格:29,000円(税別)全国大会では、札幌市立啓明中学校さんが演奏されました。
「ピエトロ」は、ロシアを代表する作曲家・チャイコフスキーのファーストネーム”Pyotr”(一般的には、ピョートルと読むことが多い)をあえてイタリア語読みにしたもので、タイトルにもすでに“モンタージュ”の意匠が込められています。
全曲を通して、「愛や葛藤、憧れ、喜び、苦悩…といったものが、チャイコフスキー自身の悲劇的な最期を想起させる終結部に辿り着くまでの人生の歩み」というイメージで作られており、オプションのチェレスタやハープ、さらにはピアノを省略しての演奏も可能となるように書かれています。
バランスに注意すれば、かなりの小編成でも演奏することができます。チャイコフスキーが見たかもしれない、ロシアの風土、時代、人、様々な情景を想起させる、ロマンチックな作品となっています。
CAFUAセレクション2012に収録しておりますので、ぜひ一度こちらでお聴きになってみて下さい。
CAFUAセレクション2012 吹奏楽コンクール自由曲選「火祭りの踊り パラフレーズ」
指揮:加養浩幸、浦川薫
演奏:航空自衛隊航空中央音楽隊次にご紹介するのは、こちらの作品♪
「カントゥス・ソナーレ」
演奏時間:約10分、グレード:4+、レンタル価格:30,000円(税別)神戸市立本庄中学校さんが演奏されました。
「カントゥス」は“うた”、「ソナーレ」には“響き”という意味があります。
うた即ち旋律を“個”あるいは“部分”ととらえ、響きを“全”もしくは“全体”ととらえることで、この曲のメインテーマである「個と全の調和の愛」をタイトルからも明示しているということが出来ます。「愛がテーマ」ということから簡単に考えると、「甘く優しい曲想」を想像して、実際の音との差に驚かれる方もいらっしゃるかも知れません。「愛」とはそれほど、多様な側面を持っているもの…と言ってしまうこともできるのですが、楽曲の「密度」の観点からもう一度作品を見直すと、これが大変「濃密」かつ「緊密」でとにかく「密」!!
この「密」な状態を、ある意味「甘い」と呼ぶことも出来るのではないかと思います。
こちらの作品は、CAFUAレーベルから2枚のCDをリリースしております。創価学会音楽隊結成50周年も兼ねて創価グロリア吹奏楽団から委嘱されたこの作品の、初演時の演奏を収めたライブディスクです。
G.マーラー 交響曲第5番
指揮:佐川聖二、瀬尾宗利、清家雅也、伊東加奈子
演奏:文教大学吹奏楽部「カントゥス・ソナーレ」を振ったのは瀬尾氏。演奏時間が8分未満となっており、創価グロリア吹奏楽団の演奏とは違った表情を楽しむことが出来るでしょう。
さて、本日最後のご紹介はこちら!
「セルゲイ・モンタージュ」
演奏時間:約7分半、グレード:4+、レンタル価格:29,000円(税別)防府市立桑山中学校さん、防府吹奏楽団さんが演奏されました。
佐川聖二氏から鈴木英史氏への、4曲目の委嘱作品にあたるこの曲では、当初「セルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を吹奏楽で」というオーダーがあったそうですが、最終的には、他のラフマニノフのモチーフも含んだ「旋律の力」を、多面的に追求した構成になったと鈴木氏は解説の中で話しています。
美しくロマンティックなメロディ、響きの中でも、どこかで客観性を保ちながら演奏することが、留意するポイントとして挙げられています。楽譜そのものは比較的大きな編成で書かれていますが、ある程度小さな編成でも演奏が可能です。
こちらの楽曲は、ブレーンミュージックから発売中の鈴木英史作品集に収録されています。
鈴木英史 吹奏楽の世界Vol.2 サーカスの女王&セルゲイ・モンタージュ(BOCD-7323)
指揮:加養浩幸
演奏:土気シビックウィンドオーケストラこの後も、吹奏楽コンクール全国大会で演奏されたCAFUA取り扱い楽曲を引き続きご紹介していきたいと思います!
どうぞお楽しみに♪
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東海大四高の「ラッキードラゴン」本日発売!
本日東海大学付属第四高等学校吹奏楽部のライブアルバムがリリースとなりました。
「ラッキードラゴン」
演奏/東海大学付属第四高等学校吹奏楽部
指揮/井田重芳
客演指揮/中村俊哉
サクソフォン/村上裕真
定価2,500円(税込) CACG-0210吹奏楽コンクール全国大会で素晴らしい「ラッキードラゴン」を披露したのが記憶に新しい東海大学付属第四高等学校吹奏楽部。7月の定期演奏会では中村俊哉氏がこの「ラッキードラゴン」を客演指揮されました。また一味違った演奏が楽しめます。
その他、現・洗足学園音楽大学の4年生で東海大四高のOBでもある村上裕真氏とのサクソフォンコンチェルトや爽やかで楽しい演奏を楽しめるポップスステージ、アンコールには美しい歌声を響かせた合唱と充実のプログラム。
北海道で雄大に響かせる東海大四高のサウンドを是非このアルバムでご堪能下さい。
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全国大会演奏作品紹介2/5
こんにちは!
引き続き、吹奏楽コンクール全国大会で演奏された作品をご紹介していきたいと思います。
本日は長生淳作品特集として、3作品ご紹介させて頂きます♪まずはこちら!
「トリトン・デュアリティ」
演奏時間:約8分、グレード:5、レンタル価格:32,000円(税別)徳島市国府中学校さんが演奏されました。
この作品は、まず全3楽章からなる「トリトン」という作品があり、その第1楽章および第2楽章に、新たな書き下ろし部分を加え、“序奏+アレグロ”という形に再構成したものです。
“トリトン”はギリシャ神話の海の神であり、『海のイメージと、それになぞらえた音楽を学ぶ若人へのメッセージ』というのがオリジナルのテーマでしたが、この「トリトン・デュアリティ」ではテーマを『海のイメージ』にしぼっています。トリトンの法螺貝が海の波を操るという伝説から、海の“静と動”二面性に焦点を当て、デュアリティ(=二面性)というワードをタイトルに加えることになりました。徳島市国府中学校さんの演奏をCDで聴かせて頂きましたが、前半の序章の部分では、「間(マ)や空間をよく表現されている」というふうに感じました。「ないものを見せる、聴かせる」というのはとても難しいことだと思いますが、思わず居ずまいを正したくなるような演奏だったのではないでしょうか。
クライマックスに向けてのタメと追い込みも、長く・途切れることのない緊迫感が素晴らしかったと思います。続いてはこちら。
「紺碧の波濤」
演奏時間:約12分、グレード:5、レンタル価格:30,000円(税別)能美市立根上中学校さんが演奏されました。
創価グロリア吹奏楽団の委嘱作品で、「悲劇の英雄」をテーマに、とのオーダーを受けて作曲されました。
悲劇の英雄、というテーマから、長生氏は「悲劇の中にあって、それでも運命をうらむのではなく、静かに受け入れる人物」をイメージしたといい、前半は「滅びの予感と受容(同時に胸の内に去来する思い)」、後半は「暗い波濤の只中へ入っていく」という構成になっています。
明確な人物像と、ドラマやストーリーを感じさせる作品となっており、それら全てがつまったワンシーンの絵画も想起させるような作品です。こちらの作品については、なんと4つの団体の演奏をCAFUAレーベルからリリースしておりますので、順にご紹介していきましょう。
REVOLUTION
指揮:佐川聖二
演奏:創価グロリア吹奏楽団委嘱主である創価グロリア吹奏楽団の演奏。
4つの中で、最も長く時間を使った演奏です。ほかに、NHK交響楽団のメンバーによる金管5重奏との『歌劇「ポーギーとベス」より金管五重奏と吹奏楽のための組曲』なども収録しています。
G.マーラー 交響曲第5番
指揮:佐川聖二
演奏:文教大学吹奏楽部指揮者は創価グロリアと同じ佐川氏、演奏時期もどちらも2005年と近いのですが、全く違った演奏を聴くことが出来ます。ハープの演奏に“琴のイメージに寄せる”ような意思が垣間見られ、全体的に“美しさへのフォーカス”“メリハリ”といった印象が感じられます。
M.アーノルド 第六の幸福をもたらす宿
指揮:加養浩幸
演奏:土気シビックウインドオーケストラ演奏時間が約9分半と最も短く、急速部の速さは非常に迫力があります。楽曲の緊張感をどこで表現するか? という部分を聴くのにもおすすめ。フルートソロをはじめとする美しいメロディーは、「なめらかさ、ゆたかさ」ではなく寂しさや孤独、渋み、つまり「わびさび」の世界観でじっくりと聴かせてくれます。
話題沸騰中の『ミュージカル「レ・ミゼラブル」より』も収録した最新盤。1’20”くらいからの、低音の四分音符の歩みがしっかり入っていて、“遅いところの緊張感”がすごいです。怖い、と形容しても良いように感じます。
さて、本日の最後、3曲目のご紹介に参りましょう。
「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」
演奏時間:約9分、グレード:5、レンタル価格:32,000円(税別)高知西高等学校さんと、秋田吹奏楽団さんが演奏されました。
この作品は、サクソフォン奏者須川展也氏の委嘱により2008年に作曲された、2本のアルトサクソフォンとピアノのための作品がもとになっています。その後2011年に、東京佼成ウィンドオーケストラの委嘱で吹奏楽版が生まれました。各パートが一人ずつ、それぞれのパートがなるべく等しく活躍するようにと意図して書かれているため、まんべんなく技術的難易度が高く(!)大変演奏し甲斐のある作品となっています。
須川氏からの委嘱時には、「パガニーニの、24のカプリスの終曲の主題を使って」との希望があったそうですが、その主題は作品のとても奥深いところに隠されています。それは、長生氏が須川氏に感じた「音楽における求道的な姿勢」、ひいては「しばしば見失われがちだが、本当に大切ななにか」のように主題を扱った結果である、と長生氏は話しています。
「なにか」を失くし、失くしたから追い求めていく。
それもまた、長生氏がこの作品に込めたもう一つのテーマであると言えそうです。「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」のノーカット演奏は、こちらのCDでお聴き頂けます。
長生淳 パガニーニ・ロスト イン ウィンド
指揮:仲田守、日野謙太郎
演奏:光ヶ丘女子高等学校吹奏楽部今年も全国大会出場を果たした光ヶ丘女子の、ライブ演奏を集めた1枚となっております。
最後までお読み下さり、ありがとうございます。
次回は、全国大会演奏作品から、鈴木英史作品の特集をお届けしたいと思います。
どうぞ、お楽しみに。
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