• 全国大会演奏作品紹介2/5

    Date: 2013.11.02 | Category: NEWS! | Tags:

    こんにちは!
    引き続き、吹奏楽コンクール全国大会で演奏された作品をご紹介していきたいと思います。
    本日は長生淳作品特集として、3作品ご紹介させて頂きます♪

    まずはこちら!

    「トリトン・デュアリティ」
    演奏時間:約8分、グレード:5、レンタル価格:32,000円(税別)

    徳島市国府中学校さんが演奏されました。

    この作品は、まず全3楽章からなる「トリトン」という作品があり、その第1楽章および第2楽章に、新たな書き下ろし部分を加え、“序奏+アレグロ”という形に再構成したものです。
    “トリトン”はギリシャ神話の海の神であり、『海のイメージと、それになぞらえた音楽を学ぶ若人へのメッセージ』というのがオリジナルのテーマでしたが、この「トリトン・デュアリティ」ではテーマを『海のイメージ』にしぼっています。トリトンの法螺貝が海の波を操るという伝説から、海の“静と動”二面性に焦点を当て、デュアリティ(=二面性)というワードをタイトルに加えることになりました。

    徳島市国府中学校さんの演奏をCDで聴かせて頂きましたが、前半の序章の部分では、「間(マ)や空間をよく表現されている」というふうに感じました。「ないものを見せる、聴かせる」というのはとても難しいことだと思いますが、思わず居ずまいを正したくなるような演奏だったのではないでしょうか。
    クライマックスに向けてのタメと追い込みも、長く・途切れることのない緊迫感が素晴らしかったと思います。

    続いてはこちら。

    「紺碧の波濤」
    演奏時間:約12分、グレード:5、レンタル価格:30,000円(税別)

    能美市立根上中学校さんが演奏されました。

    創価グロリア吹奏楽団の委嘱作品で、「悲劇の英雄」をテーマに、とのオーダーを受けて作曲されました。
    悲劇の英雄、というテーマから、長生氏は「悲劇の中にあって、それでも運命をうらむのではなく、静かに受け入れる人物」をイメージしたといい、前半は「滅びの予感と受容(同時に胸の内に去来する思い)」、後半は「暗い波濤の只中へ入っていく」という構成になっています。
    明確な人物像と、ドラマやストーリーを感じさせる作品となっており、それら全てがつまったワンシーンの絵画も想起させるような作品です。

    こちらの作品については、なんと4つの団体の演奏をCAFUAレーベルからリリースしておりますので、順にご紹介していきましょう。

    REVOLUTION
    REVOLUTION
    指揮:佐川聖二
    演奏:創価グロリア吹奏楽団

    委嘱主である創価グロリア吹奏楽団の演奏。
    4つの中で、最も長く時間を使った演奏です。ほかに、NHK交響楽団のメンバーによる金管5重奏との『歌劇「ポーギーとベス」より金管五重奏と吹奏楽のための組曲』なども収録しています。

    マラ5
    G.マーラー 交響曲第5番
    指揮:佐川聖二
    演奏:文教大学吹奏楽部

    指揮者は創価グロリアと同じ佐川氏、演奏時期もどちらも2005年と近いのですが、全く違った演奏を聴くことが出来ます。ハープの演奏に“琴のイメージに寄せる”ような意思が垣間見られ、全体的に“美しさへのフォーカス”“メリハリ”といった印象が感じられます。

    The_inn
    M.アーノルド 第六の幸福をもたらす宿
    指揮:加養浩幸
    演奏:土気シビックウインドオーケストラ

    演奏時間が約9分半と最も短く、急速部の速さは非常に迫力があります。楽曲の緊張感をどこで表現するか? という部分を聴くのにもおすすめ。フルートソロをはじめとする美しいメロディーは、「なめらかさ、ゆたかさ」ではなく寂しさや孤独、渋み、つまり「わびさび」の世界観でじっくりと聴かせてくれます。

    レミゼラブルCD
    レ・ミゼラブル
    指揮:都賀城太郎
    演奏:春日部共栄中学高等学校

    話題沸騰中の『ミュージカル「レ・ミゼラブル」より』も収録した最新盤。1’20”くらいからの、低音の四分音符の歩みがしっかり入っていて、“遅いところの緊張感”がすごいです。怖い、と形容しても良いように感じます。

    さて、本日の最後、3曲目のご紹介に参りましょう。

    「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」
    演奏時間:約9分、グレード:5、レンタル価格:32,000円(税別)

    高知西高等学校さんと、秋田吹奏楽団さんが演奏されました。

    この作品は、サクソフォン奏者須川展也氏の委嘱により2008年に作曲された、2本のアルトサクソフォンとピアノのための作品がもとになっています。その後2011年に、東京佼成ウィンドオーケストラの委嘱で吹奏楽版が生まれました。各パートが一人ずつ、それぞれのパートがなるべく等しく活躍するようにと意図して書かれているため、まんべんなく技術的難易度が高く(!)大変演奏し甲斐のある作品となっています。

    須川氏からの委嘱時には、「パガニーニの、24のカプリスの終曲の主題を使って」との希望があったそうですが、その主題は作品のとても奥深いところに隠されています。それは、長生氏が須川氏に感じた「音楽における求道的な姿勢」、ひいては「しばしば見失われがちだが、本当に大切ななにか」のように主題を扱った結果である、と長生氏は話しています。

    「なにか」を失くし、失くしたから追い求めていく。
    それもまた、長生氏がこの作品に込めたもう一つのテーマであると言えそうです。

    「パガニーニ・ロスト イン ウィンド」のノーカット演奏は、こちらのCDでお聴き頂けます。

    パガニーニ
    長生淳 パガニーニ・ロスト イン ウィンド
    指揮:仲田守、日野謙太郎
    演奏:光ヶ丘女子高等学校吹奏楽部

    今年も全国大会出場を果たした光ヶ丘女子の、ライブ演奏を集めた1枚となっております。

    最後までお読み下さり、ありがとうございます。
    次回は、全国大会演奏作品から、鈴木英史作品の特集をお届けしたいと思います。
    どうぞ、お楽しみに。