• 福岡工業大学「エクセレント・クラシックス」CDリリース!

    Date: 2017.08.23 | Category: NEWS! | Tags:

    九州大学バンドの雄、「福岡工業大学吹奏楽団」による2枚目のアルバムが8月23日リリースとなりました!「エクセレント・クラシックス 管弦楽編曲作品集」と銘打ち、クラシック編曲作品ばかり7曲を収録した意欲的なCDです。


    CACG-0264「エクセレント・クラシックス 管弦楽編曲作品集」

    福岡工業大学吹奏楽団(指揮:柴田裕二)

    吹奏楽コンクール全国大会で何度も金賞を受賞している福岡工業大学吹奏楽団(以下「福工大」)。高い音楽性と確固とした実力は、2013年にリリースしたファーストアルバム「チャイコフスキー 交響曲第4番」で既に証明済み。おかげさまで、リリースからそう間を置かずに完売となってしまいました。

    ※現在は、Amazonのディスクオンデマンドサービスにて復刻リリースを行っております。

    早くも伝説となった「交響曲第4番」リリースから4年、満を持してお届けするセカンドアルバムでは、福工大が最も得意とする「管弦楽からのアレンジ作品」ばかりを集めたCDにしたい、と柴田裕二先生(福工大指揮者)から提案を頂きました。近年、洋邦の吹奏楽オリジナル作品が取り上げられる機会が多い中で、あえて管弦楽アレンジ作品のみでCDを作るという事は、とても挑戦的な事で、また福工大の高い音楽性を表現するのに最も最適だろうと思われましたので、企画の段階からリリースの日が来る事をとても楽しみにしておりました。

    「エクセレント・クラシックス」に収録したのは、以下の7作品です。

    1.喜歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲 (オットー・ニコライ/編曲:福島弘和)
    2.歌劇「運命の力」序曲 (ジュゼッペ・ヴェルディ/編曲:木村吉宏)
    3.歌劇「イーゴリ公」より ダッタン人の踊り (アレクサンドル・ボロディン/編曲:淀 彰)
    4.交響詩「フィンランディア」 (ヤン・シベリウス/編曲:鈴木英史)
    5.火祭りの踊り パラフレーズ (マヌエル・デ・ファリャ/編曲:長生 淳)
    6.中国の不思議な役人 (バルトーク・ベーラ/編曲:加養浩幸)
    7.オペラ座の怪人 (アンドリュー・ロイド・ウェバー/編曲:ヨハン・デ・メイ)

    お気づきの方もいらっしゃると思いますが、この7曲は作曲された年代順にトラックを並べてあります。最も古い「ウィンザー」(1847年序曲初演)から「フィンランディア」(1900年初演)までの4曲が19世紀の作品、またファリャとバルトークの作品も20世紀前半の作品で、まさに「クラシック音楽」として世界中で愛聴・愛奏されている作品ばかりです。

    かの「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」の創始者としても名を残すオットー・ニコライの代表作「ウィンザーの陽気な女房たち」の序曲は、劇中に散りばめられた美しいメロディがふんだんに盛り込まれた傑作で、夜のとばりに星の輝きを感じさせるような冒頭の弱奏は、「エクセレント」を付したアルバムの1曲目に最も相応しい作品です。今回、福島弘和氏による最新の編曲で収録しました。なお、楽譜のレンタルもCD発売と同時に開始いたしますので、この名作を是非多くの団体に演奏して頂きたいと思っております。

    かつて吹奏楽コンクールの自由曲として人気を博した「運命の力」序曲。ある年齢以上の方は、冒頭の金管を聞くだけで血が騒ぐのではないでしょうか?木村吉弘氏の編曲を演奏した福工大の演奏は、力強さの中にもエレガントさを有した、そもそもこの曲が「イタリアオペラの序曲として書かれた」事を想起させてくれるもので、かつて「ブラバン」で「運力」を演奏された皆様は驚かれる事と思います。

    ロシアの大作曲家(実は、作曲は趣味だったらしいのですが)であるボロディンの、未完の大作歌劇「イーゴリ公」で最も有名な音楽「ダッタン人の踊り」は、今も昔も、管弦楽はもとより、吹奏楽編曲でも大変親しまれている作品です。オーボエソロの美しいメロディ、金管や打楽器による力強い踊りの音楽など、様々な魅力を内包している事が人気の秘訣でしょうか。実際のレコーディングでは最後に演奏した曲で、ラスト数十秒を聞いていると、4年生卒業前の最後の合奏!という熱い思いがひしひしと伝わってくるようで胸に響きます。

    シベリウスの「フィンランディア」は、特に中間部の「賛歌」が有名で合唱曲としても親しまれていますが、ロシア治世下だったフィンランドの独立への思いが込められた作品でもあります。音楽の中に国民性、民族性という意識が入り始めた頃の作品で、当アルバムの中では、レコードで例えると「裏面の1曲目」に相当する曲と言えます。「CAFUAセレクション2010」に収録した鈴木英史氏によるアレンジは、シベリウス独特な和音使いを吹奏楽でも再現できるような工夫が随所に散りばめられています。

    このアルバムに収録の曲は、基本的にはトランスクリプト(オケから吹奏楽への編成の変更だけで、曲の内容は変わらない)で構成しておりますが、「火祭りの踊り パラフレーズ」は、長生淳氏によるアレンジメントが加えられている作品という意味でやや異色です。ファリャの傑作「恋は魔術師」に含まれる多くの魅力的な音楽の中から、代表曲「火祭りの踊り」をメインに据えつつ、様々なメロディを組み合わせてアレンジされた「パラフレーズ」は、ファリャ本来の熱い音楽はそのままに、長生氏ならではの壮麗な音使いで現代的かつヴィルトゥオーゾに生まれ変わっています。楽譜のグレードは「6」の指定がされている難曲ですが、福工大の演奏を聴くとそんな事を忘れさせてくれて、ファリャ&長生氏の音楽に没頭できると思います。

    2016年の吹奏楽コンクール全国大会で、福工大はバルトーク「中国の不思議な役人」を演奏し、見事金賞を受賞しました。管弦楽編曲作を標榜する最新アルバムでも当然素晴らしい演奏で録音、収録をしております。「ウィンザー」から年代を追ってCDを聞いていくと、「役人」の現代的なサウンドに非常に驚きますが、一方で、20世紀の作品とはいえ、既に「クラシックの名曲」として広く認知されるだけの傑作である事も実感いたします。

    最後を飾るのは、クラシックとポピュラーのはざま?とも言えそうな、ロイド・ウェバーの名作ミュージカル「オペラ座の怪人」のメドレーです。このCDに収録した作品の多くは、ヨーロッパのクラシック音楽、特に歌劇場の文化と切り離せないものですが、そういった下地をふまえて「オペラ座」を聞くと、この作品はそんな歴史の流れの中で生まれてきた曲なのかな、といった事を想像できるものと思います。このメドレーはヨハン・デ・メイの編曲で、既に定番のアレンジとしてコンサート、コンクール等でよく耳にするものですが、約14分の大作メドレーを、これだけのクオリティで演奏した録音は果たしてあったのでしょうか?そういう意味でも、非常に価値のある録音となりました。

    「ウィンザー」で静かに始まった音楽が、「オペラ座」の最後で消え入るような静かな音楽で幕を閉じる、吹奏楽のCDではありますが、どこか心静かな気持ちで観賞できるアルバムになったものと思います。

    長々と書いてしまいましたが、福工大の演奏する7曲を聴いていると、これが「吹奏楽に編曲された作品」である、という事を忘れて、純粋にそれぞれの作品の音楽に没頭できる内容になったものと思います。福工大の学生たちが、本気になってクラシックの名曲と対峙して完成した作品集を、吹奏楽を愛する方達ばかりでなく、クラシックを聴く方達にこそ、是非耳を傾けて頂きたいな、と思います。